• INTERVIEW

#01

勝負、ファッション、人付き合いと、
全方位的に楽しいのが、ゴルフ

スタイリスト 森岡弘

メンズファッション界で20年以上活躍する実力派スタイリスト、森岡弘さん。豊富な経験と知識に裏打ちされたメンズのスーツやドレスシーンのスタイリングに絶大な支持を集める一方で、プロゴルファーのスタイリングやゴルフ企画のスタイリングなども手がける。そんなスポーツとファッションの橋渡し役ともいえる人物のゴルフライフを伺った。

Photo:Kousuke Matsuki
Text:Masashi Takamura
Edit:Rhino inc.

根っからの体育会系気質。
上手くなりたい一心でハマりました

ゴルフ暦は9年だそうで、森岡さんがハマった理由はなんですか?

もともと昔は、野球やスキーなどをやっていて体育会系気質。だから、上手くなりたいという思いが強かった。僕は、やり始めるとなんでもそうなっちゃうんです。野球はチームプレー。一人の力ではどうにもならないこともある。一方、ゴルフは個人プレー。上手くなるのも、勝ち負けも、すべて自分に起因するんですよね。そこに、野球では感じなかった個人プレーの新鮮さがあったんです。スコアが上がったり、距離が伸びていったりする過程が楽しかった。さらに言うと、仕事柄バタバタしていることもあって、空いた時間に打ちっ放しでつぶすようなことができるのも魅力ですよね。自分の加減でゴルフのための時間を上手く作れたから続けられているんだと思います。だから、一番のめり込んだ時期は、クルマにはいつもキャディバッグを積んでましたよ(笑)。

ということは、かなりお上手そうですが?

それが、それほどでもないんです。本格的に始めたのが9年前ですから、かれこれ8年くらいスコアは、80〜100を彷徨っている(笑)。実は、始めて1年ちょいでベストスコアは出しちゃっているんです。そこからずっとスランプ(笑)。レッスンを受けない独学というのもあるんでしょうね。独学ですから、ゴルフ誌のレッスンページを参考にすることが多いんです。すると、どれも試したくなっちゃう。ところが、みんな言っていることがバラバラなんですよ(笑)。こっちで正しいことが、こっちでは正しくないなんてザラ。ひどい場合は同じ本でも、提案が違うんですから。1軸?2軸?一体どっちをやればいいんだって。断言します、スランプは本のせいですね(笑)。ただ最近は、どれも正しいというのもわかってきました。というのは、身長も違えば、関節の硬さも違う。人に合った方法がある。そこまでは気づいたんですけどね。じゃ、僕はどうすればいいんだろうって。結局スランプなんです(笑)。

それでも、やっぱりゴルフはやめられませんか?(笑)

そう、面白いんですよ。人生ゲームみたい。全ホールダボでいいやと思えばトータル110前後。と考えていけば、100はもうすぐそこですよね。グリーンに乗ったらひとまず短く刻めば、いつかは入りますしね。つまり、正しくコツコツやれば、100は切れて行く。それを仮に90を切りたい、とした場合は、どこかでリスクを負わないと切れないですね。ダボでいいや、じゃあダメ。ならば、ここは勝負しなければ、ってね。勝負どころでリスクを負わないと勝ちにいけないなんて、まるで人生そのもの。深くて面白いじゃないですか。ときには調子に乗ることも必要ですしね(笑)。

ゴルフはコミュニケーションツール。
共通言語になると本当にうれしい

交流は広いとお察ししますが、どんな方とプレーする機会が多いですか?

ファッション&ゴルフ関係の知り合いですかね。カメラマンとか編集者とか。実は、僕自身、お尻が重いほうで、自ら率先してゴルフ場を予約して人を誘うタイプではないんですよ。自ら行けるときは、練習に行っちゃうタイプ。ですから、誘っていただいて、じゃ行く行くと。プレーしなくても、仕事上でゴルフ好きの人と出会えると、うれしいですよね。互いにゴルフが好きということがわかると、話も弾んで打ち解けてくる。自然体の関係が作れるのがいいですよね。ゴルフって先ほど言ったように、人生ゲーム的な部分が大きいから、人となりがわかりやすい。一回ラウンドするだけでも距離が縮まりますよね。真面目な話、3回、4回お酒飲むよりも、1回のラウンドのほうが仲良くなれると思います。気持ちのいい場所で、気持ちよくプレーする。ゲラゲラ笑って。こんなにいい遊びはないと思います。

理想のゴルフライフは、どのようなものですか?

うわ、難しい(笑)。去年は年間20回行きました。最低月2回は行きたいな。僕の周りには、年間6、70回とか行っている人がいるんですよ。羨ましいですけど、仕事上、さすがにそれは無理ですからね。それだけ行っている人は、上手くなっています。もう、クソってなります(笑)。グリーン周りの小技がうまいのは、6、70回も行っているからだろって。ここまでくると、もう自己流でシングルいってやろう、とも思います(笑)。仕事は楽しく、遊びは真剣に、が僕のモットー。やれる範囲で、許される範囲で、どれだけ頑張れるか、という感じです。ズル休みしてまで、ゴルフに行こうという気持ちはないですよ(笑)。

服装で自己表現ができるのも
このスポーツならではです

ゴルフのスタイリングをされる機会も多いと思いますが、ウェアってどう楽しめばいいでしょう?

ゴルフウェアって、やらない人には敷居高く思われますが、実はそうでもないと思ってるんです。今の時代、服装はカジュアルでもOKというコースも増えてますからね。むしろ、ファッションを楽しめる数少ないスポーツ。日常の延長線上で着こなしたい人でも、日常とあえて違う装いをしたい人でも、どちらも楽しめるのがいいですよね。ファッションってテンションを高めてくれるものだから。マスターバニーエディションもそうですが、今は、日常でも使えるゴルフウェアも増えていて、いろんな角度から楽しめますよね。ユニフォームがあるものが多い中で、一定のルールさえ守れば自由にできるのはゴルフくらい。ある意味でスーツスタイルにも似てますね。ゴルフも、襟付きの服を着るとか、ジーパンはNGとか、服装のルールがある。一方で、ポロシャツの裾なんかは、ちょっと出してもいいかなとか、グレーゾーンもある。そのグレーゾーンをどう楽しむか。枠はあるけど、その枠の中のグレーをどう楽しむか。自己表現できますよね。遊びの部分がある。ストリート好きは、ストリートっぽくとか、スポーティ好きはスポーティに。敷居の高いクラシカルなコースでは、英国っぽくしていると素敵だなとか。服装で自己表現できるのも、ゴルフの楽しさですね。

最後にこれから始める人にメッセージを。

すべてが楽しくて、すべてが身になる。人と出会えるし、人との関係も深くなれる。仕事のツールにもなりますからね。上手くなるのは、向上心を満たせます。球を打つというプリミティブな体験も魅力。何も考えずに振って当てて。素直に一回やってみて、と言う感じ。野球だと90mって柵越えクラスですけど、ゴルフだとミスショットでも100ヤードは飛びますからね。って最後は、野球の話になっちゃいましたね(笑)。

PROFILE

森岡弘|Hiroshi Morioka

1958年、大阪府生まれ。婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社後、『メンズクラブ』の編集部に。スタイリストとして1996年に独立後、自身の会社、グローブを設立。メンズだけでなくレディスを含む、雑誌や広告、企業とのコラボレーションなど活躍の幅は広い。ゴルファーやプロ野球選手などのスタイリングなど、スポーツ界との関係も深い。メンズファッションに関する著書多数。最新刊「ビジネススーツ超入門 成功する就活スーツ・フレッシャーズスーツはどれだ?」(講談社)も人気。